岡田テクノ特許事務所

マスクに関する特許出願概況と特許から見た課題

最終更新日:2020/02/29


1)はじめに

 マスクに関する特許出願の概況と特許から見たマスク開発における課題を整理します。
 2020年2月現在、市販の一般衛生マスクに主眼を置きながら、医療用マスク、防塵マスク等、マスク全般についての、特許出願傾向、出願目的、課題等を俯瞰します。

2)調査範囲

 出願公開されている特許出願情報(出願公開時に発行される特許公報)から関連する公開公報の情報を抽出して分析しました。

 以下の特許分類(FI)のうち、
  ・A41D13/11 保護用の顔面マスク
  ・A62B18/00 呼吸マスクまたはヘルメット
 のうち、クレーム等に「マスク」の単語があるもの、または口部、鼻部共を覆うものに絞りました。

 また、調査期間は、1998年から現在(公開までの期間があるので2018年頃まで)までに出願されたものとすると、上記調査期間において、約1800件の特許出願がありました。

3)時系列で見た出願件数の推移

 1998年からの出願件数の推移です。
 年推移で見ると、60件から120件ぐらいでスイングしてはいるものの、平均して年間約90件程が出願されています。

Overview of Japanese Patent about Mask :Patent Search of Japan

4)主な出願人の状況

 特許出願人の状況です。
 SU社の出願件数がダントツに多いです。
 SU社はプロ仕様の防塵マスクだけでなく、汎用マスクの特許も含めて幅広く出願しています。

マスクに関する特許の出願人ランキング 特許調査

5)発明の目的・効果

 特許分類Fターム(2E185)が付与されている特許出願について、マスクの発明の目的、効果について整理しました。
 「作業性の改善」「顔面との密着性の向上」「吸着・分離」が上位にきています。

マスクに関する特許出願の発明と効果 特許マップ

6)発明が解決すべき課題のキーワード間の関連性

 マスクの発明が解決すべき課題を示すキーワード間の関連性をみてみます。
 そのために、要約の「課題」の項に含まれるキーワードのバイグラム(2つの言葉のつながり)を取って、バイグラムからネットワークグラフを描きました。
 具体的には、公開公報の要約から課題の部分を抜き出し、名詞同士、名詞と動詞のバイグラムを作成、そのつながりをネットワーク表示しました。
 鼻や口を覆う、防塵といった本来の機能と共に、

 ・顔面へのフィット、空間形成
 ・製造コスト
 ・眼鏡の曇り
 ・ウイルスや花粉の捕捉、フィルタ
 ・耳にかける紐、締め方、ゴム

等の課題が、発明の背景にあるようです。

特許から見たマスクの課題のネットワークグラフ 特許マップ

7)マスクの最近の課題の整理

さらに実際に最近発行された公報(2019年~)を参照することで、より具体的な課題の詳細が見えてきます。

本来の機能の向上・維持に関するもの

 ・ダスト捕集性と通気性(低圧力損失)とを両立
 ・外装シートに付着した汚れ除去
 ・立体形状維持
 ・縦方向に適度に伸長可能
 ・機能性物質の捕捉性
 ・紐部材端部とマスク本体との接着部の接着強度が高いもの
 ・下方襞部よりも先に上方襞部が伸展されるのを抑制
 ・着用者が息を吸うときに空気の圧力降下を減少させる
 ・優れた密閉性
 ・伸縮性及び低温ヒートシール性
 ・マスクの紐が簡単に掛け易くて外れ難い形状安定性
 ・マスク内の換気
 ・マスク内の絶対湿度を高め、喉や鼻の粘膜の潤い感を向上
 ・小型化した立体形状のシート状マスクを精度良く、効率的に製造し得る方法
 ・長時間使用しても毛羽立ちが生じ難い

ユーザビリティ向上に関するもの

 ・マスク本体の下端部と下顎の下部との間の隙間の発生抑制
 ・マスク本体と鼻背との間の隙間の発生抑制
 ・眼鏡曇り防止
 ・鼻梁側面と接顔布の間に隙間ができないようにする
 ・耳への負担抑制
 ・使用時の不快感防止
 ・着用感
 ・口当てシートがめくりやすい
 ・顔面との密着性
 ・小型化
 ・携帯性
 ・良好なフィット感
 ・着用者の肌を強く刺激するおそれがない
 ・着用時に破れ難い立体形状

予防・治療に関するもの

 ・鼻腔内粘膜に投与されるアレルギー性結膜炎の予防又は治療
 ・鼻炎を予防又は治療
 ・インフルエンザ予防効果を得るために一定量のシンナムアルデヒドが放散継続
 ・認知症予防に用いられる有効成分を確実且つ継続的に吸入
 ・菌の増殖を抑制
 ・捕集したウイルス等や周囲のウイルス等を不活性化

その他の機能に関するもの

 ・鼾音抑制
 ・外観に優れた;好印象の見栄え
 ・涎防止
 ・肌の荒れやすい頬、口元、鼻の下、顎の皮膚に潤いを与える保湿効果
 ・リフトアップ効果を高める
 ・顔の美容効果を高める
 ・日焼けを防止


8)総括

・特許から開発課題を抽出して今後の開発や商品企画に活用する試みの一環として、マスクに関する特許出願の概況と特許から見たマスク開発における課題を整理しました。

・マスクはすでに研究開発しつくされた枯れた技術とも思われがちですが、年間90件近く出願されており、年々改善や新たな工夫を加え続けていることが推察されます。

・発明の目的として、マスクの本来の機能である「吸着・分離」と共に「顔面との密着性の向上」「作業性の改善」等のユーザの使い勝手や使いやすさの向上も同じくらい重要視されています。それは課題を表すワード、タームにも表れています。

・また、発明の目的の中に、使い捨てマスクと長時間使用や長寿命化、一見矛盾する2つの目的が見てとれるのも興味深いところです。

・課題ワードのつながりをネットワーク化すると、実際の部材や対象等が含まれて、具体的な課題のイメージが付きやすいです。さらにこのつながりの先を付け加えることで、又は修正することで、潜在化していた課題を掘り出しながら次の発明の創出にも役立つように思います。

・個々の発明の課題の詳細の分析は各出願の明細書を紐解く必要があります。7)で紹介したように、マスク本来機能の向上やユーザビリティに関するものの他に、予防や治療に積極的に使用すること、又は美容等の他の機能を付加することに関する課題を解決する目的のものも数多く見られました。

9)付記:マスクのアイデア創出における特許活用法

 マスクについての新たな優れた発明をするには、たくさんのアイデアの素を創出する必要があります。
 先人の特許を活用することで、発明の元となるアイデアの素を比較的時間をかけず、生み出すことができる場合があります。

    従来のマスク技術を掘り下げる
  1. マスクの先願特許(公知文献)から、注目する課題の従来の解決策を探る。
  2. 従来解決策を実施した場合のさらなる課題を挙げる。
  3. 上記課題を解決するアイデアを考えてみる。
    ※先願特許侵害に注意する必要があるがその検討は後回し。
    従来のマスク以外の技術を参照する
  1. マスク以外の技術の先願特許から、同様の課題の解決策を探る。
  2. マスクに上記解決策を適用してみる。
  3. 適用するための課題を解決するアイデアを考えてみる。
  4.      

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